前回の続き。
ダウンの加工メーカーは大手から中小企業まで日本国内にも多くあり、
日本国内で加工されるダウンのほとんどは『羽毛布団用』に使われています。
使用する量からしても衣料用と寝具用では圧倒的な差があり、
求められる品質にも実は圧倒的な差があります。
就寝時に体の上にのせる布団から「鳥のにおい」がしたり、「羽の固い部分」があたったりするのは嫌ですよね。
顔にもかなり近い距離で使用するため、徹底的に臭いや汚れを除去しなくてはなりません。
そのために、日本のダウン加工メーカーは、水や洗浄方法、乾燥方法、後加工などにこだわり高品質なものを追求しています。
その差は、並べて比較すると一目瞭然です。
ただし、一般的には、布団やダウンジャケットの中身が見えないため、
布越しで触れるダウンの違いはそう簡単に判別できるものでもありません。
毎日使う布団であれば、軽くて暖かいに越したことはなく、
追求すればいくらでもよいものが出てきます。
ではその違いを先日のダウンの写真を紐解いて見ていきましょう。
前回の違いを具体的に言うと次の区分けになります。
①鳥の違い
グース>ダッグ
②産地の違い
ハンガリー、フランス、ポーランド、カナダなど欧米系
中国、台湾、東南アジアなどアジア系
※残念ながら日本製は、ほぼありません。
どの国が良いかは、一概には言えませんのであえて優劣はつけません。
ちなみにどうしてこのような産地になっているのかわかるでしょうか?
そもそもダウンは、食用のガチョウやアヒルの廃棄されていた羽を、使用するところから始まっています。よって、ガチョウやアヒルを食用としていない国では、養殖をしておらずダウンも取れません。
フォワグラとして、その内臓までも調理食している欧州や、北京ダッグとして肉を食し、
ピータンとしてその卵を食している中華系の国でも養殖は盛んです。
よってそれらの国でダウンは多く採取できるというわけです。
ダウン以外の羽の部分も、バドミントンのシャトルなどにも使われています。
③羽毛の種類
ダウンとフェザーの区分けだけではなく、ダウンの中でもやはり卵を産んだ親鳥の羽毛は、
ダウンボールが大きくこれらを『マザーグース』と称して特別に取り扱っている高級ダウンです。
卵を温めるためにダウンボールも密度が濃く、大きくなっています。
実はその上には、最高級のアイダ―ダッグダウンがあります。
アイダ―ダックは、極寒のアイスランドの北部に生息し、約40度という体温を維持するために、保温性の高い羽毛に覆われています。親鳥は、卵を産むときに自分の胸からダウンを抜き、巣の中に隙間のないよう敷きつめて、断熱、保温の材料とすることで、大切なたまごや雛を寒さから守ります。
アイダ―ダッグの巣
アイダ―ダックは国の保護種に認定されているため、鳥に直接手で触れることができません。雛が巣立ち不要になった巣から、ダウンを1つずつ手で集めます。1つの巣から採取できる羽毛はほんのわずかで、羽毛布団1枚分(約1㎏)のダウンを採取するには、15個前後の巣から4回にわたって採取する必要があります。
では、ダウンの違いを簡単にご紹介します。
同じダウンでも「ダウンボール」の大きさがこれだけ違います。
高品質ダウンだけを見ても、これだけの差があります。
左:ポーランド産マザーグースダウン 95% DP440
左中:中国産マザーグースダウン 95% DP440
右中:中国産マザーグースダウン 93% DP420
右:ポーランド産グースダウン 93% DP400
数字でとらえると、左から高級ダウンになります。
DP(ダウンパワー)というのはPP(フィルパワー)同様のダウンの膨らみ具合を
表す単位です。
ただし、実際はダウンボールの大きさを見てもらえばわかる通り、両端のダウンボールは大きく枝葉のような羽毛部分も長いのがお分かりいただけると思います。
お値段はやはり左右のポーランド製のダウンが高いのですが、実は、ANIMEXという食肉加工メーカーで、日本向けのダウンを多く出荷しています。
規模も大きく、様々な品質のダウンを取り扱っており、鳥の養殖から食肉加工、ダウンの採取、洗浄そして寝具の製造までを一貫して行っている会社です。
ANIMEXのダウンは寝具業界では高級ダウンとして一目置かれた別格のダウンとなります。
この写真の左右のダウンは、このANIMEX社製のものです。
ただし、日本のダウン加工メーカーは、これらの高級ダウンでさえ、さらに加工して品質を向上させています。
現場で加工されているところを見せていただいた時には、本当に驚きました。
ANIMEX社についてもネットで調べてみるとやはりすごい企業です。
そのダウンでさえさらに加工して品質を上げようとする日本のクオリティの高さは、
まさに「ジャパンクオリティ」そのものだと思います。
次回は、日本での加工の内容をご紹介します!
では、また。